千葉の市川から買い取り依頼がありました。
長谷川喜十郎と言う彫刻家の木彫りがある、とのお電話です。
この仕事を何十年続けていますが、いつも初めて聞く作家名が出てまいります。
存知ませんであわてて調べました。富山県の作家とあります。
地元の同業者に聞きましたが、知らないと言われました。富山県の美術書だけを頼りに、お宅に伺いました。
品物を拝見しますと15センチぐらいの牛の木彫と、10センチぐらいの葉っぱの上に鎮座している、蛙の図であります。
来歴をお聞きしますと、奥さまの実家が富山との事で、お父上が開業医をされていたらしく、お宅の仏壇を作っている合間にこの二つの彫り物を彫ってもらった、と言う事でした。
北陸、特に富山県は浄土真宗門徒の多い所で仏壇に莫大なお金をかける、と聞いた事があります。
長谷川喜十郎家は代々仏壇を作る事を生業としていた、と資料に有ります。
特に10代目喜十郎は仏像彫刻だけでなく絵画など多芸に秀でた人であったとあります。
当時、越中の「左甚五郎」と謳われた匠でありました。
こちらも価値の程を解らないまま御譲り頂きましたが、それにしてもこの世界の何と奥深い事か、とため息が出ます。
8月の暑い日に一服の清涼の心を頂いた様な一日でありました。
(夏樹美術スタッフ I)