日本最大の門徒を持つ西本願寺22世門主、大谷光瑞上人の書をご紹介いたします。
この掛け軸は文京区のお客様から譲り受けました。
幕末、徳川方についた東本願寺に対して西本願寺は薩摩長州方の勤皇派についたのは有名であります。
光瑞上人もその改革精神を引き継ぎ、いわゆる大谷探検隊を創り、仏跡発掘調査にあたり中国、シルクロードから貴重な資料を日本にもたらしています。
また宗教改革も数多く手がけ、一つの例として盟友の建築家、伊藤忠太に築地本願寺を造らせています。
その建物は今までにない斬新な仏教寺院で、それまで伽藍は畳敷であったのをキリスト教の教会と間違うような椅子方式にしてあります。
多分に上人の発案と言われております。
また政治にも経済にも大きな影響力があり、大正3年孫文が中華民国政府を樹立した時最高顧問に就任しております。
この書幅には由来添え書きがありまして明治36年土地問題解決を得たるとき行掌として揮毫された、と添え状があります。
年譜によれば光瑞上人御門主の法灯を継いだその年になります。
私たちは普通「光瑞」の落款の掛け軸はよく見ますが、正式に法名の印だけのものはなかなかお目にかかりません。
本願寺の代表としてのプライドを感じさせます。
浄土真宗の書は禅宗の書と違い読みやすいのに、内容は凡人にはなかなか解りづらいところがあります。
真行光明遍法界 蒙光觸者心不退
真形の光明は法界をあまねく照らし 光に触れたものは心が不退となる、と読むらしいです。
「鏡如」「龍谷貫主」という立派な印が押されております。
ちなみに光瑞上人の弟に大日本仏教会会長木辺孝慈、近衛内閣拓務大臣、北支那開発株式会社初代総裁大谷尊由、妹に歌人で教育者、社会運動活動家、大正三美人の一人、九条武子がいます。
(夏樹美術スタッフ I)