今日は久しぶりに日本人の画家たちの絵画展に行ってきました。
今回ご紹介するのは現在東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展 ~江戸絵画ミラクルワールド~」です。
美術史家・辻惟雄氏が1970年代に著した「奇想の系譜」で紹介されました、今まで流派に属さない傍流扱いがゆえになかなか注目されることがなかった江戸時代実力派の画家である「伊藤若冲」「曽我蕭白」「長沢芦雪」「岩佐又兵衛」「狩野山雪」「白隠慧鶴」「鈴木其一」「歌川国芳」を一堂に見ることができる展覧会です。
21世紀の初めごろまで日本の美術史は流派の歴史を主流で語ってきたがゆえに傍流であった彼らにはなかなか日の目が当たりませんでした。
2000年に開催された伊藤若冲の没後200年記念展で一目脚光を浴びることになり、彼らは今江戸時代の大人気画家たちの仲間入りを突然果たすことになったのです。
私は今この文章を作成しながら慧鶴と其一以外の6名の画家たちの名前の漢字変換が一発で出てきたことで彼らの知名度がここにきて疑う者がないくらいまで上がったのだと思い知らされびっくりしました。
今回は「奇想」がテーマですので展示されている絵画も見ているみんなの度肝を抜くような奇抜な作品が多いのでそちらに目が行きやすいのですが、 彼ら一人一人のそのほかの作品の中にはもっと緻密で大胆な素晴らしい絵も多く、いかに彼らが実力派の画家であったのかがわかります。
私は今回特に印象深かったのが、曽我蕭白の「群仙図屏風」の絵を見ていた時に私の隣にいたご年配の男性が 「・・・よくわかんね」とつぶやいたことです。
おそらく当時も「迫力があってすごい!!・・のかもしれないけどこれはすごい絵なのかどうかよくわからない」と思った人も多かったはずだよなぁなんて考えてしまいました。
20年ほど前まで日本の美術界は王道が一番で価値も高く人気不動のものでした。
ところがインターネットを媒体とし、ありとあらゆるジャンルの、かつ世界中の人々が様々な情報を共有するようになった現代では王道以外のものにある日突然スポットライトが当てられ、あっという間に拡散し、急に華々しい舞台に躍り出るような現象が頻繁に起こるようになったのです。
うちの社長の師匠が数年前に刀剣展を見に行った時に若い女性が多くてびっくりしたと言っていて、ネットのゲームで今刀剣がブームで刀剣女子なんて言われていて・・と説明に四苦八苦した覚えがあります。
草間彌生もこんなに人気が出たのはここ10年ほどのことで、それまではここまで注目されていなかったのです。
今回の奇想の系譜だって辻惟雄氏が著作したのは1970年代と40年ほど以前のことで、それがいきなりこんなに注目されて当の本人もびっくりだったでしょう。
世の中にはまだまだ本流の陰に隠れたすごいお宝がたくさん日の目に当たることを夢見て眠っています。
次のブームは何が来るのか、そんなことをここからも発信していければと思っています。
(夏樹美術スタッフ H)