猿埴輪

埴輪というと、中国の明器のように死者と一緒に埋葬された、あるいは殉死の代わりに埋葬されたなどと思われがちですが、本来埴輪は古墳の周囲に列状に立てて並べられており、むしろ目立つようにして立てられておりました。

そうした埴輪が長い年月の間に植物や土砂に自然に埋もれて、現在の状態になったのです。
では、何の目的で埴輪は作られたのでしょうか。

当時としては大変な土木工事であっただろう古墳に、だれの墓であるかを示すものが一切見当たらない事を考えると、これらの埴輪は葬られる人の家柄や先祖や個人の功績を顕そうとした目的で、作られ立てられたのではないかと思うのです。

埴輪の種類は、家形、人物、動物、船形、甲冑などと多岐にわたっています。
動物は鹿、犬、鶏、水鳥、牛、馬など当時の人々との関わりのある動物が多く見られます。
そうした中で特に注目されているのが、現在一点しか確認されていない猿の埴輪です。
それは茨城県玉造町より出土した、重要文化財に指定されている子猿を背負った母猿の埴輪で、身近にいる猿を普段からよく観察していると思わせる優れた作品です。

今回紹介する猿の埴輪も、前所有者の話によれば同じ茨城県出土と伝えられるもので、一気にへらで作られた口や顔の表情に、何のてらいのない、気安く作った作者の腕の良さが感じさせられる埴輪です。

ところでなぜ猿の埴輪だけ数少ないのでしょうか。
猿だけは食用としていなかったからという意見も過去には有りましたが、最近の発掘調査では猿も食用の対象となっていたことが分かっています。猿は当たり前に周りに数多くいたからでしょうか。
非常に興味のあるところです。ところで重要文化財の猿の埴輪には子猿がいた痕跡のみで、子猿は失われています。ひょっとしたらこの小さな猿の埴輪が、失われた子猿かもしれません。
そんな夢を見させてくれる埴輪であります。

この逸品紹介をお寄せいただいた方は、私どもと長いお付き合いをいただいている、横浜のお寺のご住職様でございます。
このコーナーにご自分の逸品を載せてみたいとお思いの方は大歓迎でございます。

(夏樹美術スタッフ N)

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