西へ旅する機会があり、せっかくですので岡山県井原市にある田中美術館を見てまいりました。
ここは地元岡山県井原市で生まれた近代彫刻界の巨匠である平櫛田中(ひらくし でんちゅう)を記念した美術館です。
(晩年の10年間を過ごした東京都小平市にも平櫛田中彫刻美術館がございます)
折しも平櫛田中に所縁の深い棟方志功展が『秋季特別展 棟方志功‐平櫛田中を「先醒」と呼んだ板画家』として行われており、思いがけず楽しみの増えた鑑賞となりました。
平櫛田中はある時期から彩色木彫へと移行するのですが、当時としては異端であり、挑戦でもありました。(古様では彩色はよく見られましたが、素材の趣を損なう等の理由から、明治以降はあまり行われておりませんでした)
しかしながら実際にその作品を目にすると、執念さえ感じるほどの徹底した人体への探求、写実性を含め、その完成度に目を奪われます。
田中の作品の理想形はここにあるのだという事が実感できました。(本館には彩色木彫のきっかけともなった「源頼朝公像」も展示されております)
代表作とも言える鏡獅子の制作過程における試作等の資料・作品も充実しており、また新たな目で東京の国立劇場の鏡獅子が眺められるのではと思います。
棟方志功展に目を移しますと、板画、肉筆画、油彩画等様々なジャンル、そして大作まで、多数の作品が並び、田中が文化勲章を受章した際に贈った「二菩薩釈迦十大弟子」もたいへんきれいな状態での展示がされております(大原美術館等でも展示されておりますね)。
棟方が同じ木を扱う作家として尊敬していたという田中との関係性も詳しく記述されており、非常に充実した内容となっておりました。
彫刻がメインの美術館はそれほど数が多くありませんので、なかなかまとめて作品を鑑賞する機会がありません。良い機会となりました。
(夏樹美術スタッフ T)