東京国立博物館で開催されている「始皇帝と大兵馬俑(へいばよう)」展

東京国立博物館で開催されている「始皇帝と大兵馬俑(へいばよう)」展を見てきました。

考古学上20世紀最大の発見、とも言われる兵馬俑関連の展示はもちろん見ごたえのあるものですが、その他にも始皇帝が行った当時としては画期的な中央集権等の行政、インフラの整備等に関する展示もたいへん興味深いものでした。

日本は当時まだ弥生時代であり、私たちが学んだ「日本の歴史」を思い起こしてみても、文化の成熟度という点では比較にならないくらいの違いが見てとれます。

圧政や後年の焚書等、その人となりは賛否両論様々な解釈があるかと思いますが、成し遂げた「統一」という功績よりも、その成熟した大文化圏を作り上げた事に、より大きな価値があるような気がします。
中国統一を果たすまでの戦国時代、その傘下におさめた各地の文化を軽視せず、融合させていったところからも、始皇帝の柔軟性を感じる事が出来ました。
(この辺りは詳しく展示がされております)

私共が取り扱いをさせていただく「書」の分野でも始皇帝は重要な取り決めを行ないました。
漢字書体の統一を行い、篆書体を皇帝が使用する標準書体とし、臣下が用いる文字を隷書としたと言われております。
土木工事等の物理的インフラだけではなく、こうした文化面でのインフラ整備にも大いに力を尽くしたという部分が始皇帝を単なる王ではない、特別な評価がなされている要因なのだと思います。

始皇帝の死後わずか3年で秦は滅ぶことになりますが、その事からも如何に彼が卓越した能力を有しており、唯一無二の存在であったかが見て取れます(そうとう恨みを買っていたとも言えますが…)。

ともあれ始皇帝と、晩年に彼が夢見た死後の世界に思いをはせつつ、かつ日本文化への多大なる影響を感じるには充分の見ごたえのある展示物でありました。

(夏樹美術スタッフ T)