清代の宮廷美術

清の時代の特に乾隆帝の時代は政治、軍事、美術文化の最盛期である。
ここににおいて他の時代と異なる特筆すべき点は多くの西洋人の宣教師画家の存在である。
彼らの存在により宮廷絵画は西洋絵画の影響を多く受けることになった。

清代で最も代表的な西洋人画家は郎世寧(ジュゼッペ・カスティリオーネ)というイタリア出身の宣教師であろう。
彼の初期名作は「聚瑞図」や「百駿図」などがあり、その後「乾隆皇帝朝服像」、「乾隆皇帝大閲図」などの傑作を描いた。
また、晩年に描かれた「青羊図」や「交趾果然図」などは当時の歴史を伝える作品と言える。

郎世寧 乾隆帝朝服像
郎世寧 乾隆皇帝大閲図

 

郎世寧 青羊図
郎世寧 交趾果然図
郎世寧 百駿図
郎世寧 聚瑞図

王致誠(ジャン・ドニ・アッティレ)も同時代に活躍したフランス人宣教師で、馬や人物を描くのを得意とした。主な作品に「十駿図」や「乾隆帝射箭図」などがある。

王致誠 十駿図
王致誠 十駿図
王致誠 乾隆帝射箭図

艾啓蒙(シクルプス)はボヘミア出身の宣教師であり、人物画や鳥獣画を得意とした。師は郎世寧でその画法には共通点も多い。代表作は「百鹿図」で西洋画の技法を用いて表現されている。

艾啓蒙 百鹿図

賀清泰(ルイス・デ・ポワロ)はフランス出身の宣教師で、郎世寧王致誠亡き後も引き続き宮廷に奉仕し、西洋絵画と中国絵画の混合である「東西折衷」の絵画を制作した。代表作に「賁鹿図」や「白鷹図」などがある。

賀清泰 賁鹿図
賀清泰 白鷹図

安若望(ダマスコ・サルスティ)はイタリア出身の宣教師で、安泰、安徳義の名でも知られる。彼は郎世寧王致誠艾啓蒙らとともに「準回両部平定得勝図」という銅版画を合作した。

準回両部平定得勝図

潘廷章(ジョゼフ・パンジ)はイタリア出身の宣教師で、肖像画を得意とし、乾隆帝や少数民族の帰属横行などの肖像画を描いた。代表作「乾隆帝像」は油彩で描かれている。

潘廷章 乾隆帝像

清朝宮廷絵画の最盛期である乾隆帝の時期の山水画の代表画家には唐岱張宗蒼などがいた。唐岱王原祁に師事した。代表作は「晴巒春靄図」などがある。

唐岱 晴巒春靄図

張宗蒼王原祁に師事した宮廷画家のひとりである。代表作は「呉中十六景画册」などがある。

張宗蒼 山水

そのほかにも人物画、花鳥画を専攻した宮廷画家として冷枚丁観鵬などが優れた作品を残している。
冷枚郎世寧などの西洋人画家の影響を受け、独自の画風を生み出した。
人物画の中でも特に仕女図に優れていた。
代表作に「避暑山荘図」、「春閣倦読図」などがある。

冷枚 避暑山荘図
冷枚 春閣倦読図

丁観鵬は仏教と道教の人物画や山水画を得意とした。郎世寧に師事し、従来の画法に西洋の画法を混合し作品を作り出した。代表作は「画文殊像」などがある。

丁観鵬 画文殊像

花鳥画においては特に宮廷の画風に影響を及ぼした画家として惲寿平鄒一桂が挙げられる。
惲寿平は四王呉惲のひとりで、多くの画家に影響を与えた画家である。
代表作は「山水花卉雑画冊」などがある。

惲寿平 山水花卉雑画冊

鄒一桂は花卉作品は工筆画の手法を駆使したものが多く、写実的である。
乾隆帝に進呈された「百花捲」や「翠柏雙喜図」などが代表作である。

鄒一桂 百花捲
鄒一桂 翠柏雙喜図

清末期になり西太后が書画に対する興味を持ち宮廷は西太后の女性の代筆者を三名、書画家として招き入れた。繆嘉恵、王韶、阮玉芬である。
繆嘉恵は西太后の最も重要な書画の代筆者で、花鳥画を得意とした。
西太后の描いた牡丹図や多くの花鳥画はすべて彼女の代筆で完成したものである。
王韶は山水画と蘭竹をよく描いたが、西太后にはあまり重用されず、最後には宮廷を離れてしまった。

繆素筠 魚藻図
繆素筠 牡丹

阮玉芬繆嘉恵同様西太后からの寵愛を受けた女性画家である。花卉、翎毛を得意とした。

阮玉芬 団錦凌波

 

 

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